【あらすじ】オブシディウスの物語【解説】

テッセレーション・第4ラウンドの手がかりとして、久しぶりに「オブシディウス」の名が登場しました。2016年上半期のイングレス・ストーリーで、物語の中心となった人物です。今回はこの人物と、その物語に焦点をあててみたいと思います。

【概要】

アバドン・アノマリー後の2016年に入って程なく、ローランド・ジャービスから初めてその名が明かされました。それを皮切りに、世界中のポータルから物語の断片が発見されていきます。一連の物語は2016年のオブシディアン・アノマリー、イージスノヴァ・アノマリーを読み解く、「もうひとつのイングレス・ストーリー」を語っていたのでした。

参考: オブシディウスの探検(Explorations of Obsidius):Project Lycaeum

オブシディウスは実在人物?

アノマリーのタイトルにもなった「オブシディアン」は、日本語では黒曜石と呼ばれるガラスに似た黒色の鉱物です。古代ローマの博物学者、大プリニウスの「博物誌」によれば、その発見者は「オブシウス」という人物であったと言われています。

ストーリー内ではハンク・ジョンソンが若かりし頃、調査中にその名に出会ったことがあると言います。しかしその名前は後世に「修正」されたものであるとも述べています。

物語の構成

オブシディウスの物語は大きく2つのパートに分かれます。ひとつ目は、各地で様々な啓示を受けながら、オブシディアン・シールドやマグナスの謎を解き明かす旅を続ける、オブシディウスの手記と書簡。ふたつ目は、巫女シビュラの導きによって時空を超え、現代の様々な出来事を目撃した体験が綴られています。

...正直なところ、ヤマもなければオチもない、決して面白い物語とは言えません。この冒険譚はただ、はるか昔に起きた出来事が、現代の私たちへと繋がっていることを示すのみ。

【第1部 オブシディアン・シールドとマグナス】

オブシディウスは、古代ローマ時代に時の皇帝ティトゥスに仕える兵士でした生まれながらに様々な才能を持ち、また異文化への造詣があり、それは兵士としての彼の実績にも生かされていました。

ある時、オブシディウスはドイツ戦線へと派遣され、そこでひとりの司祭に出会います。司祭はオブシディウスに北アフリカへ向かい、オラクルに会うよう告げました。帰国後、皇帝ティトゥスにこのことを報告すると、ティトゥスはその言葉に従い、オラクルを探して「マグナス」に接触するようにと命じました。

オブシディウスにはシュファクスというお供が付けられました。シュファクスは並外れた言語能力を持ち、旅の通訳としてオブシディウスの信頼を得ていました。オラクルを探す旅路で、彼らは巫女シビュラに出会い、彼女もこの旅に同行することとなりました。こうしてオブシディウスとシュファクス、巫女シビュラの3人による「マグナス」を探す旅が始まりました。

一行はポンペイで大プリニウスと接見しました。大プリニウスの指示に従いベスビオ火山へ向かうと、その山中でシビュラは「アンサイル」と「アイギス」という2つの盾を探せという神託を受けました。

旅の道中、オブシディウスは黒曜石で作られた鏃(やじり)を発見します。彼の名にちなんでオブシディアンと名付けられたその石には、不思議な図形が描かれていました。シビュラはこの鏃が、「イージス・ノヴァ」に至る大崩壊をもたらすと予言します。

旅の中で、同行していた案内人シュファクスはどうやらただの通訳ではなく、その正体は暗殺者なのではないかとオブシディウスは疑惑を持つようになりました。後にシュファクスは、オブシディウスが発見した鏃を盗んで逃亡してしまいます。

やがて、オブシディウスたちが探し求めていた「マグナス」とは大プリニウスを中心とする混成集団であり、オブシディウスが発見した鏃──オブシディアン・シールドを活性化することで、シェイパーやナジーアと、この世界との間に障壁を構築しようとしていたらしいことがわかります。当然それは、古来からマグナスの伝統を受け継いできた13マグナスとアンチマグナスの双方を敵に回す行為で、周囲からは不吉なものと忌避されました。

そしてついに、恐れていた災厄が訪れます。紀元79年にベスビオ火山が噴火し、その被害で中心人物であった大プリニウスが死亡。シビュラはこの災害をベスビアン・マグナスによるシールド活性化が原因であると言い、その影響で世界中の「リーミナ(現代のポータル)」が沈黙したと告げました。

シビュラは姿を消し、ベスビアン・マグナス、そして鏃がその後どうなったのかはわからなくなります。

【第2部 時空旅行】

ギリシャのサントリーニ島で、オブシディウスがシビュラと共に海の生き物に姿を変え、海中を泳ぎ回る幻影を見たという記録が発見され、第2の物語が始まります。この体験が先述の旅の途中のことだったのか、ベスビアン・マグナス崩壊後のことだったのかは定かではありません。

オブシディウスはシビュラの力によって、さまざまな時代や場所を巡る不思議な旅をします。それらはどうやら現代のイングレスにまつわる場面であったようです。インドの宮殿で瞑想するヤーハンの姿エンライテンド集落にいるアコライトとクルーサン・サバ鉱山で採掘をする男たち、後に「テクトゥルフ」と名付けられる事になる技術が隠されていた第二次大戦中のXM研究施設と潜水艦東京で発生したイージス・ノヴァ・アノマリー、そして森の中でポータルを生み出そうとしているニューウェーブ・エージェントたち。

この旅の間にもシュファクスはオブシディウスたちを追いかけてきていましたが、彼の目的はわからないままでした。

* * *

ここで一連の断片の出現は途絶え、物語は収束したかに思われていましたが、2017年になって一度だけ再びオブシディウスのものと思われる断片が発見されています。オブシディウスは見知らぬ町を彷徨い、その果てにマグナス・ネストを発見します。並べられた13個の棺の中に、彼は自分自身の遺体を見つけ、その肉体へと還っていきました

【解説】

冒頭で述べたとおり、この物語は2016年のオブシディアン・アノマリーと並行して始まり、その後のイージス・ノヴァ・アノマリー、ヴィアラックス・アノマリー頃まで断続的に続いたものです。

オブシディアン・アノマリーでは同時期にオブシディアン・シールドの実物と思われる黒曜石の鏃が発見されており、エージェントたちによってそこに刻まれたグリフの解読が行われました。そしてアノマリーでは、このシールドの力をどちらの陣営が行使するかが争われ、エンライテンドが勝利しています。アノマリー終結後、シールド活性化の影響で世界中のポータルからXMの湧出が止まり枯渇するという事態が発生。エージェントたちはオリバー・リントン=ウルフの呼びかけに応じてポータル調査に協力し、事態は半月ほどで収束しました。

この一連の出来事とリンクするように、オブシディウスの物語は語られていきました。

やがてこのシールドの兵器転用をかけたイージスノヴァ・アノマリーが発生し、これと前後してニューウェーブと呼ばれる特殊な外見を持つエージェントたちの噂が流れ始めます。オブシディウスの物語にも、このニューウェーブと似た特徴を持つ人物がたびたび登場しています。

そして2017年に現れた最後の断片から、ひとつの仮説が導かれます。

大プリニウスを中心とした13人のセンシティブ集団「ベスビアン・マグナス」には、皇帝ティトゥスやシビュラ、そしてオブシディウス自身も、知らない内にその一員となっていたのではないでしょうか。もしかするとシュファクスもそのメンバーだったかも知れません。

物語の進行中、P.A.シャポーがエージェントたちに対し興味深い質問を投げかけました。

クエスチョン・オブ・デイ:オブシディウスは誰の前世か

マグナスの13人には「アーキタイプ」というそれぞれの役割が割り当てられています。つまり現代の「ナイアンティック・マグナス」を構成するナイアンティック計画の研究者たちとの間には、同じアーキタイプを持つ対応した人物がいると考えられるのです。それが彼らの前世なのかどうかはわかりませんが。

「マグナス」は長い歴史を通して、世界中でいくつも作られてきたと言われています。思い当たる人物や集団はありませんか?もしかしたら、私たちもまた、知らない内に──。

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2019年11月24日~30日

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【用語解説】マグナスとアーキタイプについて